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体操(37)

小学生のとき、体育の時間に平均台から落下して以来、私は器械体操が苦手になった。体操部にいた同級生の女の子は、平均台の上で足を振り上げたり、男の子は鉄棒で連続逆上がりをしたりと、いろいろな技を披露した。苦労した末にやっと跳び箱が跳べたと思ったとたん、箱の角でお尻をしこたま打ったりする私からみれば、それはとてもものすごいことだった。 

   小学生程度の実技でもたまげてしまうので、たまたまテレビで大学生や社会人の実技や、世界選手権などを見る機会があると、口をあんぐりと開けたままで閉じるヒマがない。だいたい鉄棒であんなにぐるぐるまわっていながら、鉄棒から手を離しても着地するまで空中でぐるぐるまわっているなんて信じられない。猫ならまだわかるが、彼らもあれだけ回転しながら、すっくとマットの上に立ち上がる。にっこり笑って両手を上げる余裕さえあるのだ。 

   女性のほうも幅があれだけしかない平均台の上でV字バランスはするわ、とんぼがえりはするわ、ふつうの人が平たい地面でもとうていできないようなことをやってのける。一本の鉄棒ですら四苦八苦するのに、彼女たちは段違いに二本ある鉄棒の間を素早く空間移動したりするのである。彼らの三半規管はいったいどうなっているのか、覗いてみたいくらいだ。 

   彼らのやっていることは、基本的にはどれもこれも神業である。それなのに「何点」と点をつけられるのだから、恐ろしい。ふつうの人間だったら、あれだけ空中でくるくる回ったら、まともに着地などできるはずないのに、空中の姿勢が乱れた、着地の時にちょっと足の位置がずれたといっては減点される。お気の毒としかいいようがない。十点満点が出ると、 

   「これはお見事」

   と拍手するけれど、体操競技のためにつくられた人造人間みたいな気がしないでもない。これからどんどん技がエスカレートしていったらどんなふうになるのだろうか。私はただただ驚嘆しながら、テレビを見ている。

 

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