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「約束の詰まったお菓子の缶」

 無事就職も決まり、念願の一人暮らしのために、何か持っていくものはないかと、役に立ちそうなものはないかと、家中をひっくり返していた時のことだ。 押し入れの奥から、お菓子の缶が出て来た。賞味期限を見ると、2003.1.9とある。

 残念、お菓子が残っていても、もう食べられる状態ではないらしい。

 とは言え、やはり中身が気になった僕は、とりあえず缶を右に左にそっと傾けてみた。するとさぁーっと、中で何かが滑り落ちていく音がした。何か入っているみたいだけど、でも妙に軽いというか薄いというか……。クッキーやキャンディのそれではない。それに考えてみると、あの母がお菓子を後で食べようと押し入れにしまっておいて、そのまま忘れて腐らせてしまう……なんてことはありえない。

 じゃあ中には一体何が?

 僕は怖いもの見たさから、恐る恐る缶のフタを開けてみた。そっと慎重に、中で眠っている(かもしれない)妖精を起こさぬように。

 すると-そこにあったのは、たくさんの紙きれだった。不器用にちぎりとられた、色とりどりの紙きれ。

 僕はその内の一枚を適当に選んで開いてみる。

『部活終ったらさ、タイヤキ屋寄ろうぜ。部活終わりのタイヤキはたまらんよなぁ』

 もう一枚。

『昼休み一緒に中庭で弁当食おうや。あとな、ちょっと相談したいこともあんねん』

 もう一枚。

 『放課後すぐに公園にきてくれへん?あるコがな、あんたに話があるねんて。ていうか来い。絶対やで? 約束したかんね!』

 これは……僕は思い出す。

 学生時代、僕らのクラスでは、授業中に先生の目を盗んで、友人たちとノートやメモ帳の切れ端を使い、短い手紙のやりとりをするというのが流行った。内容は大体が昼休みや放課後に約束を取り付けるものだった。

 その時の紙きれが、今長い時間をこえて、このお菓子の缶から溢れて来たのだ。

 僕は夢中になって、その紙きれをどんどんと読んでいった。

 一緒に帰る約束、寄り道する約束、相談に乗る約束、デートの約束-。

 でもひとつ疑問が湧いた。

 こんなお菓子の缶にこんな紙きれを入れて、大事に取っておいた覚えは僕にはないぞ?

 でも押し入れを少し見渡すと、すぐに疑問は晴れた。

 所々はげたランドセル、穴の開いたもう捕球の出来ないグローブ、擦り減ったクレヨン、幼い僕が描いた母の絵……。

 物の捨てられない性格の母が、僕の制服のポケットにぐしゃぐしゃになって入れっぱなしになっていたその紙きれを洗濯の時にでも見つけて、捨てるに捨てられず、まぁ一応、と取っておいてくれたのだろう。別段、意味なんてなく。

 僕は不意に、向こうに着いたら母に手紙を書こう、と思った。そこにはたくさんの約束が添えられている。

 -帰って来たら僕が手料理を振る舞うよ。

 -初任給が出たらプレゼントを贈るよ。

 -彼女が出来たらすぐに紹介するよ。

 そしたら、母の女手ひとつで育てられた僕がこの家を出た後、一人ぼっちになってしまう母の胸に、小さな希望の灯を燈せるかもしれない。こんな紙きれに書かれた、昼休みや放課後の他愛ない約束が、退屈な授業や辛い部活をなんとか乗り切らせてくれたみたいに。

 約束は未来を彩る。

 色とりどりの紙きれの詰まったこのお菓子の缶を見ながら、僕は思った。

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