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「ベストフレンド!」

 大学生になった娘が ある日突然私の古いコートが欲しいと言ってきた。“まだだめ。お母さんが着るから。”と言うと“死んだら頂戴ネ”とかわいげの無いことを言い出す。“まあその内に差し上げまーす”と改まった口調で娘の襲撃をかわした。 “お母さん今年も元気にこうやって桜が見られたことうれしいとおもう?”と腕を組んで歩いていた娘が前を向いたままわたしに尋ねた。毎年恒例になっている近くの公園での夜桜見物。“そうね、お母さんの人生で残されたお花見の回数は75歳の寿命としてあと25回位かな、そう思うと寂しい気もするけれどまあ貴方には分からないだろうな”と言うと“そりゃ分らないよ。”と娘は笑った。

 連日夜遅く帰宅する娘に“いい加減にしなさい”と叱ると“自分の尺度だけであれこれわたしに指図するのはもうやめてよ!”と言い返してきた。そして“もう社会人なのだから自分でキチンと考え行動してます”と言われてしまった。わたしは“分かったわ”と言うだけであとは黙った。

 癌検診でひっかかってしまった。再検査の結果を聞きにいく朝、先に職場に出掛けた娘は玄関のドアにyou'll be all right!の貼り紙をして行った。グリーンの鮮やかな蛍光ペンで書かれたメッセージ、思いがけない娘の優しい心遣いとカッコ良さにthank you!と言って家を出た。あなたは本当にいい娘だね。

 “来年結婚しようかな。”仕事が忙しくてイライラしている最近の娘の口癖。“もう少しお金溜まってからにすれば?”と言うと“お母さん達だって貧乏生活からスタートしたんでしょ。お母さんよりもっと幸せになる自信はあるから大丈夫。”と真面目な顔で説得されてしまった。“分かったわ”しか返せなかった。

 娘現在25歳。随分厳しく育ててきたと反省もしている。最後に頬をぶったのが中学3年生の時で 息子に比べると3年も延長した事になる。最近はすっかり素直になり親子喧嘩をする事も無くなってしまった。親が我が子を自分の理想に向かって必至に育てることが良いのか悪いのか分からない。でもどう頑張ったって20数年間もの間ずっと順風満帆なんて有り得ないと思う。ただ最近の二人の関係はベストだと感じている。娘の言うことに“分かったわ”とすんなり言えるのも その証拠かもしれない。娘とわたし 親子関係を卒業した親子と言ったところだろうか。そして一緒にいて妙に心地良いのは私だけだろうか、、、、。

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