一 出発 私は頬を打たれた。分隊長は早口に、ほぼ次のようにい...
二 道 部落の中はアカシヤの大木が聳え、道をふさいで張り出し...
三 野火 私はいつか歩き出していた。歩きながら、私は今襲われ...
四 坐せる者等 病院の附近は、住民の開墾した玉蜀黍畑が草原を...
五 紫 日は暮れて来た。空は夕焼して赤い色が天頂を越え、東の...
六 夜 夜は暗かった。西空に懸った細い月は、紐で繋がれたよう...
七 砲声 次に眼を覚したのは、砲声によってであった。夜は殆ん...
八 川 幾日かがあり、幾夜かがあった。私を取り巻く山と野には...
九 月 さらに幾夜かがあった。中隊を出る時三日月であった月は...
一〇 鶏鳴 二日の後、私はその椰子の林を去った。立ち上るのに...
一一 楽園の思想 こうして私は飽満の幾日かを過した。周囲に聞...
一二 象徴 それから毎日、倒木を渡ってこの斜面に坐り、海を眺...
一三 夢 その夜私は夢を見た。 私は既にその村に歩み入ってい...
一四 降路 その時私のいた丘の高さは約三百米、海岸までの距離...
一五 命 明るさは急速に増しつつあった。林に行き着き振り返る...
一六 犬 扇状に拡がって、ゆるく海へ傾いた斜面は、三十軒ばか...