小林多喜二

《争われない事実》

誰よりも一番親孝行で、一番おとなしくて、何時でも学校のよく出来た健吉がこの世の中で一...

《蟹工船》

 一「おい地獄さ行えぐんだで!」 二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛...

《疵》

 「モップル」(赤色救援会)が、「班」組織によって、地域別に工場の中に直接...

《級長の願い》

 先生。私は今日から休ませてもらいます。みんながイジめるし、馬鹿にするし、じゅ業料も...

《工場細胞》

 上 一 金網の張ってある窓枠まどわくに両手がかゝって――その指先きに力が...

《一九二八年三月十五日》

一 お惠には、それはさう仲々慣れきることの出來ない事だつた。何度も――何度やつてきて...

《父帰る》

 夫が豊多摩刑務所に入ってから、七八ヵ月ほどして赤ん坊が生れた。それでお産の間だけお...

《テガミ》

 此処を出入りするもの、必ずこの手紙を読むべし。 君チャンノオ父ッチャハ、工場&ti...

《党生活者》

 一洗面所で手を洗っていると、丁度窓の下を第二工場の連中が帰りかけたとみえ...

《独房》

 誰でもそうだが、田口もあすこから出てくると、まるで人が変ったのかと思う程、饒舌じょ...

《母たち》

 弟が面会に行くとき、今度の事件のことをお前に知らせるようにと云ってやった。 差入の...

《人を殺す犬》

 右手に十勝岳とかちだけが安すッぽいペンキ画の富士山のように、青空にクッキリ見えた。...

《不在地主》

                一     「ドンドン、ドン」 泥壁には地図のように...

《防雪林》

  一 十月の末だつた。 その日、冷たい氷雨ひさめが石狩のだゞツ廣ぴろい平原に横なぐ...

《北海道の「俊寛」》

 十一月の半ば過ぎると、もう北海道には雪が降る。(私は北海道にいる。)乾いた、細かい...

《雪の夜》

 一 仕事をしながら、龍介は、今日はどうするかと、思った。もう少しで八時だ...