春はあけぼの。やうやう白くなり行く、山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびき...
三月三日は、うらうらとのどかに照りたる。桃の花の今咲き始むる。柳などをかしきこそさ...
思はむ子を法師になしたらむこそ心苦しけれ。ただ木の端(はし)などのやうに思ひたるこ...
(一) すさまじこもの。昼ほゆる犬。春の網代(あじろ)。三、四月の紅梅の衣(きぬ)。...
(二) 児(ちご)の乳母(めのと)の、ただあからさまにとて出でぬるほど、とかく慰めて...
(三) 除目(ぢもく)に司(つかさ)得ぬ人の家。今年は必ずと聞きて、はやうありし者ど...
(一) 憎きもの。急ぐことあるをりに来て長言(ながこと)するまらうど。あなづりやすき...
(二) ものうらやみし、身の上嘆き、人の上言ひ、つゆちりのこともゆかしがり、聞かまほ...
(三) また、物語するに、さしいでしてわれひとりさいまくる者。すべてさしいでは、童も...
心ときめきするもの。雀(すずめ)の子飼ひ。ちご遊ばする所の前渡る。よき薫(た)き物...
虫は 鈴虫。ひぐらし。蝶(てふ)。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひを虫。螢...
あかつきに帰らむ人は、装束などいみじううるはしう、烏帽子の緒...
(一) 頭の中将の、すずろなるそらごとを聞きて、いみじう言ひ落とし、「何しに人とほめ...
(二) いみじく憎みたまふに、いかなる文ならむと思へど、ただ今急ぎ見るべきにもあらね...
(三) 皆寝て、つとめて、いととく局(つぼね)に下(お)りたれば、源中将の声にて、「...
(四) 「『ただ、この返りごとに従ひて、こかけをしふみし、すべて、さる者ありきとだに...